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*REAL"F"
  
  
  
  
 
 
 
 
キュッ・・・
 
少し湿った床にソールが擦れ、心地良い音を立てた。
 
罵声や掛け声が響くこの体育館で
額に浮かんだ汗を左手首につけているリストバンドで拭い、
ちらりと見飽きた壁に設置された時計を見る。
19時26分・・・ちょっとやりすぎたか。
 
「・・・・集合!!」
 
窓を開け放っているとはいえ、熱気がこもる体育館。
そこで声を張り上げたのは土方十四郎、ここ銀魂高校バスケ部のキャプテンだ。
待ってました、といわんばかりに
熱心に練習していた他の部員がパタパタと土方の元に駆け寄る。
全員が揃い、前後2列にきっちり並んだところで土方は口を開いた。
 
「…最近練習休む奴が多いようだが、もう3年がいねぇからって気ぃ抜くんじゃねぇぞ。
 これからは俺らのバスケを作ってかなきゃならねぇんだ。
 そこんとこよく考えて行動しろ。・・・以上」
 
土方が喋ると誰もが黙って背筋を伸ばす。
その生まれつき鋭い目付きや漆黒の髪、低く響く声には誰も逆らおうとしない。
いや、逆らえないのだ。
それが、土方十四郎。通称『鬼の部長』なのである。
 
ピンと張り詰めた空気の中、「解散」という合図の後 1年生は即座にコート整備に取り掛かる。
その様子を見とどけて土方は部室に戻ろうとした、
 
その時
 
   バシッ!!!
 
 
と乾いた音と共に土方の背中にじんわりと痛みが広がった。
痛みに顔を歪ませながら後ろを振り返る土方の目先には
白い猫毛、覇気の無い眼、白い肌‥‥‥‥
土方と同じ2年のバスケ部、坂田銀時が居た。
 
「……ッ、毎回毎回普通に呼べねェのかテメーは‥‥」
「まーまー、そんなに怒るなって、大串君!」
「大串って誰だよ?!」
「冗談だって。まったく相変わらず頭かてぇなぁ土方くんは」
 
こんな軽口をたたく銀時だったが、彼も土方と同様、抜群のセンスを持つプレイヤーとして有名だ。
そんな2人のいるここ銀魂高校バスケ部の実力は全国規模でも中の上で
土方と銀時はこの地域の高校の中では名の通ったコンビだった。
 
「テメーの頭が異常にスカスカなだけだバカ。
 それより銀時、ここんとこ練習サボる1年 多くねェか?」
 
土方がそう言うと、銀時からさっきの悪戯っ子のような笑みがふっと消えた。
 
「ん?‥‥‥‥あぁ、そうだな」
 
興味が無さそうに頭をポリポリと掻きながらそう答える銀時。
毎度のことだが土方は少しイラつきながら言葉を続ける。
 
「やっぱ1回全員呼び出してカツ入れた方がいいか・・・それとも――――」
 
「あのさぁ」
 
土方の言葉を遮り、珍しく銀時が無表情で口を開く。
 
「別にいいんじゃね?辞めたい奴は辞めりゃあいいじゃねぇか。
 やる気の無い奴に居られても邪魔だ。
 お前はいい奴過ぎんだよ。どうせ部員全員のこと『今まで一緒に頑張ってきた仲間』
 みたいに思ってんだろ?」
 
「‥‥な、仲間だろ。俺はそう思っている。当たり前じゃねぇか・・・。お前はそう思ってないのか?」
 
土方は部員全員のことを常に気にかけ、仲間として接してきた。
銀時はそれが間違っているとでも言いたげなニュアンスを交えて言葉を返してきたから驚いた。
自分の考えを否定され、土方の心に沸々と怒りの感情が湧き起こる。
 
「じゃあお前はアイツらのことどう思ってんだよ?!」
 
怒りに身を任せて乱暴な口調で土方は問う。
すると銀時は一瞬考えるような仕草をしたが、平然と
 
「別になんとも思ってねぇよ」
 
と答えた。
 
なんとも思ってねぇ・・・って。
土方は怒りを通り越し、呆れ果ててしまった。
 
「お前、バスケってのはチームワークが大切なんだぞ。
 なのにそりゃねェだろ‥‥‥」
 
「んー まぁ確かにそうだけどさ。‥‥‥‥‥」
 
銀時は言葉を止めて歩き出した。
土方は慌ててその背中を追いかける。
 
「だろ?もっとアイツらのこと考えてやろうぜ?」
 
土方は必死に銀時を説得しようとした。
しかし、銀時は横目で土方を見ながら軽く微笑んで
 
「俺はお前とバスケがしたいだけだ。‥‥別に他の奴には興味ねェ」
 
とサラリと言い放った。


またコイツはそんなことを言って‥‥‥
土方は己の頬が熱くなるのを感じた。
慌てて右の手の甲をほっぺに押し当てる。
ひんやりとしていて気持ちが良い。
シラフであんな恥ずかしいことを言った銀時は
何も言い返せないで呆然と立ち尽くす土方に
振り向きもしないまま、「お疲れ」っと手を振って早々と立ち去った。
 
 
―――『お前とバスケがしたいだけ』。
 
 
そんなことを言われたら誰だって嬉しいに決まってる。
 
前述したように、銀時は土方と並ぶ程バスケが上手い。
でも、どこにも縋り付かない飄々(ひょうひょう)としたその性格は
チームワークなど無視したまるでこのスポーツには向かないものだった。
だから、この銀魂高校バスケ部の部長は全員一致で土方に決まったのである。
 
でも、土方だけは知っている。
銀時が練習が終わってからも近所の公園で銀時が自主練していることや、
図書館でバスケの本を読みあさっていること。
それに、本当は誰よりもバスケにかける想いが強いことを。
 
そんな銀時に土方は少し憧れの念を抱いていた。
考え方は違っても、根本的な所でのバスケに対する気持ちは同じようだし、
気難しいしい土方と いい加減な銀時は不思議なことに気が合った。
時には喧嘩もするけれど、お互いがお互いのマイナス面をカバーし合っていることで調和が成立しているのだろう。
2人のバスケは 流れるようなフットワークを常に保っていた。
ディフェンスする隙はどこにも見当たらない。
それはまるで ひとつのメロディーを奏でているような軽やかさだった。
それも全て2人の信頼関係があってこそのもの。
土方は銀時を必要とし、また銀時もそれを思っている。
 
 
俺にだけでなく、他の部員にも同じように接してくれれば良いのに。
そうすれば、このチームはもっともっと・・・・・・強くなる。
 
土方はそう思いつつも先程言われた言葉を思い出し
一人 高揚する心を抑えきれずにいたのだった。
 
 
 
 
◇
 
 
 
 
「あれ?お前まだ居たの?」
 
あれから数日後。
土方は部活が終わった後の体育館で銀時と顔を合わせた。
大会まではまだ数ヶ月ある。
しかし3年が居なくなった今、自分が部を引っ張っていく立場になったことで
土方は更に自分の腕を磨かなければいけないという思いに駆られていた。
というわけで土方は一人自主練に励もうと放課後部活が終わった後
一人 体育館へと足を運んだのだ。
 
しかし、そこにはどういうわけか 銀時の姿があった。
 
「お前こそ、まだ練習すんのか」
 
銀時は左手でボールをつきながら土方に尋ねた。
 
いつもは自宅近くの公園で密かに自主練をする銀時が 学校にいることなんて滅多にないことだ。
努力しているのを見られたくない性質なのかと思っていたので
銀時がこの時間この場所にいることに土方はとても驚いていた。
 
「お、おう。でも珍しいな、お前が学校で自主練なんて」
「まぁな。‥‥‥‥」
 
何故か口籠もる銀時に土方は疑問を感じたが、
せっかくコートも貸切で、しかも銀時と2人きりなのだから
たまには楽しもうと思い、自ら案を持ちかけた。
「? まぁいい。なぁ銀時、一対一の勝負しようぜ。
 どっちが多くシュートを決められっか勝負だ」
 
そう言った後、土方は銀時の様子がおかしいことに気付いた。
いつもの銀時なら勝負事、特に自分との勝負は喜んで受けるはず。
 
なのに今日は軽く俯き、何も言おうとしないのだ。
 
自分の案を聞いて 喜ぶどころか むしろ苛ついているように見えた。
 
(俺、なんか悪いことしたか・・・?)
 
土方は普段自分にすら感情を表に出すことのない銀時のあからさまな変化に動揺し、
何と声を掛けたら良いのかわからずにただオロオロと目線を泳がせていた。
 
その時、銀時が左手のボールをダンッと床に押さえつけた。
そして、初めて土方と視線を絡ませた。
 
 
 
表情から感情を読み取れたことのない銀時の眼からは
今この瞬間、怒りという感情が確実に読み取れ、
その事実に土方はゾッとした。
 
 
 
(こんな銀時、見たことねェ‥‥‥‥)
 
 
 
そんな土方を見つつ、銀時は静かに口を開いた。
 
「お前、人のことはうぜぇほど気にしてる割に自分ことは全く気にしてねーのな」
 
突然投げかけられた言葉を消化しきれずに土方は呆然としてしまう。
 
「な、なに言ってんだお前。何が言いてェんだ‥‥‥」
 
銀時はまた苛ついた表情を浮かべ、チッと舌打ちをした。
 
「‥‥‥足 」
 
深いため息のあとに銀時はそう呟いた。
 
「足痛めてんじゃねーの?俺らには仲間とか言っときながら
 結局 おめーも俺らのこと信用してねーじゃねぇか」
 
一瞬、息が止まった。
 
「お前‥‥なんで‥‥‥‥」
 
土方は驚きに言葉がでない。
銀時の言う通り、土方は2、3日前から左足首に軽い痛みを覚えていた。
しかし、ただでさえ無形のプレッシャーによって
メンタル面に負担のかかるこの時期にチームメイトに心配をかけるわけにはいかない。
そう考えた土方はこの痛みのことは誰にも言わないでおこうと心に決めていたのだ。
 
それなのに銀時にはバレてしまっていた。
 
『仲間なんだから隠し事はするな』と偉そうなことを言った本人が
重大な隠し事をしていることに銀時は腹を立てたに違いない。
土方は己の行いを反省し、どうしたらよいものかと考えた。
もしかして、他のチームメイトにもバレてしまっているのだろうか。
 
それなら尚更タチが悪い。
 
「安心しろ。俺の他には誰も気付いちゃいねぇよ。
 勿論、俺も誰にも言っちゃいねぇし」
 
土方の不安を察知したかのように銀時は呟くように言った。
 
「お前のことだ。誰にも心配かけたくねェとか思ってるんだろうと思ってな」
 
銀時はそんなことを後につけたした。
この言葉を聞いて土方の心にジワリと温かいものが溢れてきた。
 
「‥‥銀時‥‥‥悪ィ、俺‥‥」
 
「いや別に‥‥俺も強く言い過ぎた‥」
 
必死に謝る土方を見た銀時は 慌てたように自らも謝罪の言葉を述べる。
 
それを聞いた土方はその言葉を否定した。
 
「悪いのは全部俺だ。どうしたら許してくれるか?‥‥」
 
土方は俯いていた視線を上げ、銀時を見つめた。
その時、堪えていた涙がぽろりと土方の眦(まなじり)から零れ落ちた。
銀時は目を見開き、それから何故か目を眇(すが)めて土方を見つめる。
 
「?‥‥‥銀時」
 
不意に銀時が土方に歩み寄ってきた。
土方はこれから自分の身に何が起きるかを瞬時に理解した。
 
(殴られてすむのなら、それで銀時が許してくれるのなら我慢、だ・・・)
 
そう思い、土方は次の瞬間に訪れる衝撃に備えるため身体を強張らせ、
ギュッと眼を瞑(つむ)った。
 
しかし、いつまで経っても「次の瞬間」は訪れず、
その変わりに何か温かいものがフワッと己の身体を包み込んだ。
 
思いも寄らぬその感覚にビクッと身体を震わせ、土方は反射的に眼を開けた。
 
「ぎ、銀時――――‥‥」
 
あろうことか、銀時は土方を抱きしめていた。
少し汗のにおいが混じった、銀時の香りが身体を包み込む。
土方の頭は一瞬真っ白になったけれど、すぐに我を取り戻す。
 
「ちょ、おまッ・・・何してんだ?!」
 
土方は銀時の行動の主旨(しゅし)が読めないことから頭の中が混乱し
ジタバタと銀時の腕の中で暴れることしか出来なかった。
しかし、銀時はそんな様子を無視するように土方を抱きすくめる。
ギュッと抱きしめられるとなんだか変な気分になり、土方は暴れるのをやめて
いつの間にかされるがまま、銀時の腕の中に納まっていた。
 
「な、銀時・・・?どうしたんだよ・・・」
 
確認するようにおずおずと質問する土方に銀時は
 
「お前、なんで俺が怒ってたかわかるか?」
 
と抱きしめたまま、優しい声で問いかけてきた。
独特の響きを持ったそれは土方の耳を熱くする。
 
「み、耳元で喋んな……ッ」
「……土方、答えて」
「……ッ。そ、それは・・・俺は自分の言ったことも守れねぇくせに偉そうなことベラベラ喋って‥‥」
 
「ちげぇよ」
 
自らの失態を後悔と羞恥の念に駆られながらも必死に話す土方の言葉を銀時はピシャリと遮った。
 
「え?‥‥じゃあ何でお前は怒ってんだよ‥」
 
他に思い当たる節が見当たらない土方は思い切って銀時に尋ねた。
 
「お前が自分のことを雑に扱うから、それに腹がたっただけだ」
 
「は?なに言って‥‥‥って‥ぅわっ!!」
 
土方が銀時の言葉を理解できずにいると銀時はいきなり自分達の右側にあった扉に手をかけ
それを一気に開いた。と、思ったらそこに土方を無理矢理押し込んだのだ。
一番手前にあった硬い布のような丘にバンッと身体をぶつけ、
土方はそれに這いつく張るような体勢になった。
 
「痛ッ‥‥‥おい、お前なんなんだよ!さっきからもう訳わかんね‥‥‥っ」
 
土方は痛みに顔を歪ませながら自分の居る場所を確認した。
ドンという鈍い音がした途端、さっきまでの明るい光はどこかに消えて
変わりにほこりっぽい空気が漂い、薄暗い視界の中にコンクリートの壁が眼に入る。
今俺がのっかってるのは体操の授業で使うあのマットで‥‥‥‥
ということはここは、体育館倉庫‥‥‥?
頭をフル回転させていると銀時が土方に圧し掛かるようにして接近してきた。
小さな窓から電灯の明かりと月の光が差し込む薄暗いその場所は
なんだかとてもイケナイ雰囲気を醸し出している。
 
「お、おい・・・銀時?」
 
戸惑いながらも土方は必死にいつもの銀時に戻ってもらおうとその名前を口にする。
しかし、銀時は更に身体を密着させながら土方の耳元で囁いた。
 
「もっと自分のこと大切にしろ。人のことばっかり考えてんじゃねーよ…
 俺は、お前のことが・・・好きだ。だから・・・腹がたった」
 
突然囁かれた内容に思考が停止した土方はワンテンポ遅れて耳まで真っ赤にした。
 
「え、あ‥‥‥えっと‥‥銀時、今自分が何言ってんのかわかってんのか‥」
 
銀時に囁かれた言葉に動揺しつつも、土方は必死に平静を装う。
 
「わかってる。ずっとお前が好きだった‥‥‥もちろん友達としてじゃなくて、だ。
 俺にはお前が必要なんだよ‥‥土方」
 
思ってもみなかった。
誰かを好きになるとかそういう感情とはかけ離れた場所に存在していると思っていた銀時が
まさか自分にそんな気持ちを抱いているなんて‥‥‥
しかし、土方はそれに驚くと同時に 同姓に告白されて嫌な気持ちにならない自分が居ることにも驚いていた。
 
銀時だから、だよな‥‥‥‥‥‥
土方はそう思った。
他の奴だったらこんなことさせねぇし、
今だって本気で嫌だったら突き飛ばしてでもこの腕の中から逃げていくはずだ。
なのに今の俺はそんなことをする気になれない。
これは‥‥‥これは好きって感情なのか‥‥‥
 
不思議な感覚に悩まされていると銀時は急に土方を見つめてきた。
反射的に土方もその男を見つめ返す。
と、同時に唇に柔らかいものが乗ったのを感じた。
「‥‥‥っ、銀時!!」
 
一瞬何が起きたかわからなかったが
それが銀時の唇だと分かった瞬間、湯気がでるのではないかと思うほど土方は顔を赤らめた。
途端に銀時がクスクスと笑う。
土方は馬鹿にされたのが悔しくて離せ離せ!と喚いた。
しかし、その願いが聞き入れられるわけも無く
土方は銀時に更に強く抱きしめられた。
 
「土方‥‥‥土方は俺のことどう思ってんだ?」
 
いつもの飄々(ひょうひょう)とした態度は微塵(みじん)も感じられない。
そこには真剣な男の顔があった。
 
「どう・・・って・・・わかんねぇけど・・・
 でも、嫌いじゃねぇし・・・こんなことされても嫌って思えねぇし‥‥‥」
 
聞きなれない声色に戸惑いつつも、土方は必死に言葉を紡ぐ。
しかし、銀時はそれを聞き終わる前に またその唇を己のそれで塞いできた。
さっきの触れるキスではなく、もっともっと深く土方を貪ってくる。
 
「‥‥‥はっ‥‥ぁ‥‥‥んぅん?!」
 
土方が苦しくなって息を継ぐと、その隙に銀時は舌先をぬるりと土方の口腔に忍ばせてきた。
 
「ん・・・ん、んんっ・・・・・・」
 
普段の銀時からは感じとれないような荒々しい口付けに土方は頭の中が蕩けそうになる。
ざらりと舌と舌とが擦れ合うと、今まで感じたことの無い感覚が土方を襲う。
唇から2人の唾液が零れるのも気にしず、ただ欲望のままに夢中でお互いを求めた。
 
「‥‥‥‥っ」
 
すると不意に胸の辺りに冷たいものが這うような感覚がし、土方の身体は大きく跳ねる。
反射的に目をやると、そこには自分の素肌の上にひたりとあてられた銀時の手があった。
 
「おまっ‥‥いつのまに‥‥‥」
 
着ていた体操服を肌蹴られたのに気付かなかった自分に土方は少々焦り、
銀時に恨みを込めた眼差しを送る。
 
(一言くらい断りいれんのが普通だろーが・・・)
 
自分が組み敷かれ、銀時にリードを奪われていることが今更ながら気に入らなくなった土方は立ち上がろうとした。
しかし、
 
「あっ!?‥‥‥‥んぁっ、‥‥」
 
銀時はまるでそれを許さないとでも言うように突然土方の胸の尖りを摘んだ。
女の子でもないのに、そこを刺激されるとゾクゾク痺れるような感覚が身体中を蝕む。
 
「ぁ‥‥‥っ、ん‥‥‥はぁ‥‥‥‥‥‥」
 
「‥なかなか感度いいじゃん‥‥‥」
 
快感にわななく土方を見つめていた銀時は土方の耳元でそっと囁く。
土方はその刺激にさえ打ち震えてしまう自分の身体に羞恥を覚えながらも
必死で漏れてくる嬌声と吐息を堪えようとした。
 
「‥‥‥なぁ 土方 」
 
もっと声、聴かせろよ‥‥‥‥‥と銀時に甘く囁かれる。
しかし、土方にだってプライドがあるのだ。
銀時を無視し、その手によって与えられる感覚を必死に堪えていた。
 
が―――
 
「んッ!‥‥‥ゃ‥‥‥ぁ、ぎんッ‥‥‥ぁん‥‥」
 
指で愛撫され続け、紅く熟れてぷつりと尖ったそこに銀時は舌を這わせてきたのだ。
舌先でチロチロと舐め、唇で吸い上げるように弄る。
 
さっきまで自分の唇に触れていたそれに敏感になったその場所を刺激されるだけで
頭が真っ白になるくらい強い快感に溺れそうになる。
 
(やばい‥‥‥もう‥‥‥‥)
 
土方は下腹部に溜まった熱の疼きに耐えられなくなっていた。
キスだけでも感じてしまっていた自身は、執拗な胸への愛撫により質量を更に増していく。
無意識のうちに土方は銀時の身体に腰を擦りつけていた。
 
「どうして欲しい?」
 
そんな土方の状況を認識した銀時は意地悪くそんな質問をしてくる。
しかし土方には強がる余裕なんて微塵も残ってはいない。
土方は懇願するように潤んだ瞳で銀時を見つめ、
右手を伸ばし、銀時の髪に指を絡ませる。
 
微かに開いた唇から零れる乱れた吐息と火照った身体‥‥
 
異様なほどの艶っぽさに一瞬 眼を見開いた銀時だったが
貪るようなキスを土方に浴びせながらそっと手を土方の中心の上に置く。
そこはジャージの上からでもわかるほどにまで成長していた。
 
「ん‥‥‥ぁ‥‥‥ッ」
 
軽くなぞっただけで土方の口から甘い吐息が漏れる。
腰を撫でられただけで土方の身体はビクビクと震えた。
 
「腰、上げれるか?」
 
そう言った銀時の声が心なしか掠れている。
自分に対して興奮してくれているんだと思うと土方は心が躍った。
 
「・・・ん 」
 
素直に腰を持ち上げ、ジャージを引き抜かれる。
薄い下着の上からそれを触られる感覚は今までに無いほど気持ちよく
思わず自ら腰を動かしてしまう。
 
「ぁ‥‥んっ、ぎんとき‥‥‥‥」
 
名前を呼ぶと土方を見つめる欲望に染まった銀時の瞳が微かに揺れた気がした。
それを合図とするように銀時はそっと下着の中に手を入れ、土方の昂りをやんわりと握る。
途端にそれは質量を増し、ヒクヒクと土方の身体が震えた。
 
「ぁ!‥‥‥ゃ、あ‥‥‥ぅ‥‥」
 
それに触れられると土方は顔をしかめ、必死に何かに耐えるような仕草をした。
目じりには雫が溢れている。
銀時はそれを見て、すっと土方の下着から手を抜いた。
 
「‥‥‥?ど、した‥‥‥?」
 
「手で触られるの辛いんだろ?」
 
「え‥‥ぃや、そんなことねぇ‥‥‥‥」
「嘘つけ‥‥顔に書いてあるぞ 」
「―――――――― !」
 
この男は何故こんなに自分を読み取るのがうまいのだろう。
土方はそんなことを思った。
長い時間焦らされた昂りに触れてもらえたのは良かったのだが
乾いた手による刺激は膨張したそれを圧迫してくるような感じがして格段に辛い。
それと同時に強すぎる快感が土方を襲い、意識が飛びそうになっていたのだ。
銀時はそれを察知して、手の動きを止めてくれたのだろう。
 
でも何もされないことの方がもっと辛い。
土方は下肢を強張らせながらも「いいから‥‥」と言って
銀時が与えてくれる刺激を望んだ。
しかし、荒く肩で息をする土方をその腕で優しく包み込んでいた銀時は
パッと身体を離してマットから降りた。
土方がじれったく思っていると不意に己の中心に柔らかなものが触れる。
 
「あ!ぇ‥‥んッ‥‥‥んん‥‥‥ゃ‥ぁあッ」
 
銀時はそっと土方の中心に舌を這わせてきたのだ。
その柔らかな刺激はそのまま快感へと変わり、土方の身体はずくずくに蕩けそうになる。
絡みつく唇に腰がふるえ、吸い上げられる昂りは否応なく反応した。
わざと音を立てて舐めしゃぶられて先端に滲む体液を啜られると
どうしようもなく感じてしまって土方の口からは甘い嬌声が零れ落ちた。
まるで神経を直接刺激されているかのような衝撃が土方の身体を貫いた。
 
「ああ、あ‥‥‥っんぅ‥‥‥‥ぁ‥‥‥!」
 
裏側を舌先で舐め上げられ先端を吸われた瞬間、堪えきれずに土方は欲望を爆ぜてしまった。
銀時はそれを何のためらいもなくゴクリと飲み込む。
 
「ぁ、ぇ‥‥‥おまっ‥‥?!」
「ん?どうかした?」
 
平然と、そしてうっすらと笑みを浮かべながら銀時は土方を抱きすくめる。
 
「‥‥‥‥いや、なんでもねぇよ 」
 
余裕綽々といった様子の銀時に土方は内心うろたえていた。
( なんか一方的にイカされちまったな・・・)
そんな羞恥を感じ、恥ずかしさに何も言えなくなっていると
 
「気持ちよかった?」
 
銀時はそんな言葉で更に土方を攻めてくる。
 
「っ・・・!んなこと・・・」
 
顔を赤らめる土方を見て満足したかのように
銀時は微笑みながら土方をより一層強く抱きしめる。
その腕の感触が心地よいと感じている自分を自覚して土方の胸がドキンと跳ね上がる。
 
「土方・・・・・  」
「ん?」
 
耳殻をペロリと舐められ、ゾクッと背筋を震わす土方に 可愛い・・・ と微笑みながら囁く。
顔を火照らせ反論しようとしたけれど、今だけはそんな甘い台詞に酔っても許される気がして。

土方は自分と少しも変わらない背丈の男の身体にそっと身を任せた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なぁ・・・なんでお前、今日はここで練習してたんだ?」
 
土方はずっとひっかかっていたことを思い切って銀時に尋ねた。
 
「んー、お前が来るかなと思って」
「・・・じゃあ俺が足痛めてたことにはいつ気付いたんだ?」
「今日の練習が終わったあと 」
「? いつ気付いた?」
 
「お前がシューズ脱ごうとしたときに一瞬顔をしかめたからそうじゃねぇかと思っただけだ」
 
「・・・・・・・・・・・」
 
「ん?どうした?」
 
土方は自分の鼓動を抑えようと必死だった。
銀時はそんな時まで自分を見ていてくれたのだ。
誰も気付かない自分の変化に銀時だけは気付いてくれた。
今更ながら、その事実があまりにも嬉しく思えて仕方なかったのだ。
同時にそんなことにも気付かなかった自分の鈍感さを悔やんだ。
 
土方は自分の中の衝動を我慢することが出来ずにそのたくましい腕に顔を埋める。
 
「好き・・・だ、銀時・・・・・」
 
自分の腕に顔を埋めながら小声でそう囁いた土方を
銀時は宝物を扱うように優しく、しかし力強く抱きしめる。
 
「もうぜってー離さねぇから」
 
銀時はそう言って土方の顔を引き寄せ、そっと甘く柔らかな接吻を施したのだった。
 
 
 
おまけ→★(R18) 
 
                     
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